測量図なしの土地売却は可能?確定測量と費用の要否やトラブル回避の流れを解説!
2025/09/18
土地や戸建を売却したいけれど、測量図が手元にない——そんなとき、「本当に売却できるのか?」と不安になる方は少なくありません。
ですが、境界標や登記情報、現況の状況次第では、測量図がなくても売却が可能なケースも十分にあります。
この記事では、測量図なしで売却できる条件や注意点、買主が重視するポイント、トラブルを防ぐための準備などを具体的に解説します。
「測量図がないから売れない」と諦める前に、まずは何を確認すればいいのかを一緒に整理していきましょう。
まず結論—測量図がなくても売れる条件
測量が不要になる場面と限界
測量図が手元になくても、売却が可能なケースは珍しくありません。
境界標がはっきり確認でき、登記簿の地積と現況の面積に大きな差がなければ、公簿売買で対応できることがあります。
また、前面道路の種類や幅員が役所で確認できると、建築の可否も見通しやすくなります。
隣地との関係が円滑で、越境物がない、もしくはすぐに是正できる範囲であれば、買主の不安は抑えられるでしょう。
ただし、境界が不明確な土地や、私道の負担が不透明なケースでは、測量が事実上必要となる場面も出てきます。
特に住宅ローンの利用や建築前提の買主に対しては、境界確定図や地積測量図の提出を求められることが一般的です。
マンションとは異なり、土地や戸建の場合は、境界の状態が売却に直接影響します。
判断に迷うときは、不動産会社や土地家屋調査士に相談し、現況と書類の差異を早めに整理しておくことが肝心です。
買主タイプ別の最低条件
買主がどんな目的で土地を探しているかによって、必要とされる条件は大きく変わります。
自宅として使う買主は、境界の明確さや道路の幅、越境の有無といった基本的な情報を重視します。
また、ローンを利用する場合は、金融機関から境界や地積の説明資料の提出を求められることもあります。
ハウスメーカーを通じた購入では、測量図や境界確認書が揃っていると、検討スピードが格段に上がります。
一方で、買取再販業者や投資家の場合、不確定な要素も受け入れ可能ですが、その分、査定価格に反映される傾向があります。
登記情報、公図、現況の整合性がとれていれば、買主への信頼材料になります。
越境や私道の通行承諾といった将来的なトラブルを、書面や写真で「見える化」できると安心感が生まれます。
最低限の準備が整っていれば、測量図がなくても買主の不安を和らげることは十分に可能です。
境界の明示で満たすべきポイント
境界の説明でまず必要なのは、現地にある境界標の有無を確認することです。
そのうえで、ブロック塀やフェンス、植栽などの工作物が敷地内か外か、見取り図に落とし込んでおくと後々役立ちます。
隣地所有者とタイミングが合えば、立ち会いのうえで境界確認書を交わせば理想的です。
登記簿や公図の内容と、実際の形状や面積感に大きなずれがないかを見ておくことも重要な視点です。
私道が絡む場合には、通行や掘削の承諾が得られるか、管理体制がどうなっているかも押さえておきましょう。
前面道路についても、建築基準法上の道路に該当するかどうかを役所で確認しておくと安心です。
もし境界標が一部欠けている場合は、その旨を説明し、必要に応じて将来的な復元の方向性を示しておくと丁寧です。
写真や図面、書類を組み合わせた説明ができれば、測量図がなくても誠実な姿勢は伝わります。
調査中の内容がある場合も、見込み時期を合わせて伝えることで、買主との信頼関係を築きやすくなります。
売り方の選択の使い分け
公簿売買で済む条件と注意点
公簿売買とは、登記簿に記載された地積をそのまま取引に使い、面積の差異が後でわかっても精算しない方式です。
境界が明確で、現況に大きな問題がなく、買主が資金計画を組みやすい条件がそろえば、現実的な選択肢となります。
契約書では「登記記録に基づく面積で売買する」ことを明記し、誤解やトラブルを防ぐことが大切です。
ただし、私道の負担や越境の有無、是正の考え方などは、公簿であっても丁寧に説明する必要があります。
建築計画がある買主には、将来的な測量や地積更正の可能性についても先に伝えておくと安心です。
役所で取得した道路種別や後退に関する情報があれば、説明力がさらに高まります。
一方、筆界が不明確、地形が複雑、過去の分筆が多いような土地では、公簿だけで進めるのは難しいケースも出てきます。
不確定要素が多い場合、価格交渉の材料にされやすく、結果的に測量をした方が合理的なことも少なくありません。
買主の融資審査に影響しそうな点があれば、あらかじめ金融機関へ確認してもらうとトラブル回避になります。
実測売買にするときの面積差の扱い
実測売買は、実際に測量した面積に基づいて売買を行い、登記と差があれば精算を行う方法です。
契約書では、精算の単価や対象面積、上限割合、測量の方法や範囲、費用負担の区分まで明記するのが一般的です。
官民境界や隣地立会いが必要になる場合は、日程調整を含めて十分な時間を確保しておくことが求められます。
面積が増えるか減るかにかかわらず、公平に精算できるルールを事前に合意しておくことが大切です。
地域の慣習も考慮しつつ、仲介会社や土地家屋調査士の実務経験に基づいた内容にするとスムーズです。
精度の高い測量成果を契約条件に含めておくと、後のトラブルを未然に防げます。
分筆や地積更正が前提になる場合は、それらの登記完了を引渡しの条件とする運用も有効です。
また、資金計画や決済日と精算タイミングがズレないよう、スケジュールを整えることも重要なポイントです。
不明点がある場合には、中間段階で確認をはさみながら合意を進めていくことで、双方にとって納得感のある取引になります。
境界確定が求められる判断基準
買主が建物の新築や再建築を予定していたり、融資を利用する場合には、境界が確定していることが強く求められます。
たとえば、官民境界が曖昧だったり、私道負担の範囲が不明確、あるいは越境の可能性がある場合には、確定測量が実質的に必須となることも。
役所から道路の種類やセットバック(後退)に関する指導が想定される場合も、測量図が法的な根拠になります。
また、面積のわずかな違いでも価格に大きく影響するような地価の高いエリアでは、確定の有無が価格交渉に直結します。
過去に隣地と境界でもめた経緯があったり、境界標が欠損していたりする場合も、確定の必要性は高まります。
確定までにかかる期間や費用は土地の条件によって異なるため、早めに実施の可否を判断しておくことが有効です。
どうしても確定が難しい場合は、価格や引渡しの条件でリスクを調整するという考え方も選択肢の一つです。
買主の用途や融資条件に合わせて、どこまで測量が必要かを不動産会社と相談しながら進めるのが現実的です。
判断の過程や根拠を文書に残しておけば、後々の信頼構築にもつながります。
測量図なしで今すぐ確認すべきこと
登記・公図・面積の照合
まずは登記簿謄本を取り寄せ、地番や地積、地目、所有者などの情報が最新かどうかをチェックしましょう。
次に、法務局で公図を取得し、敷地の形や隣接地との関係を把握しておくと安心です。
あわせて、過去に地積測量図や現況図が作成されていないかも調べておくと有効です。
もし図面があれば、面積や基準点、作成年月などの記載を確認し、現況とのズレがないかを見ておきましょう。
登記・公図・手元資料の内容に違いがあれば、その理由を仮説として整理しておくと、後の相談がスムーズです。
分筆や地目変更の履歴がある土地では、境界や面積の説明に必要な補足資料も洗い出しておくことが重要です。
建物がある場合は、建物図面や平面図から建物と敷地の位置関係を確認しておきましょう。
情報は「説明できること」と「不明点」に分けておくと、買主への伝え方が明確になります。
登記・公図・現況写真をそろえておけば、不動産会社とのやり取りも具体的に進められます。
境界標・越境・私道のチェック
現地に出向いたら、まず境界標がすべての角にあるかどうかを確認しましょう。
その際、材質や形状、傾きの有無も写真に記録しておくと、後で役立ちます。
次に、ブロック塀やフェンス、庇、雨樋、植木などが敷地を越えていないかをチェックします。
空中や地下の越境(たとえば雨水排水、枝や根の侵入)も見落とさず、写真とメモで残しておくのがポイントです。
私道に面している場合は、通行や掘削の承諾書があるか、持分や管理体制も確認が必要です。
境界標が欠けている箇所は、仮杭やテープなどで位置を示しておくと説明しやすくなります。
簡単な現況スケッチにメモを添えて、不動産会社と情報を共有すれば、重要事項説明での漏れも防げます。
隣地との合意書や、過去のやり取りがある場合は資料として整理しておきましょう。
ライフラインと道路後退の有無
売却前には、水道・下水・ガス・電気・通信などのライフラインが敷地内にどう引き込まれているか確認しておきましょう。
浄化槽や古い排水管が残っている場合、それらの撤去費用がかかる可能性があるため要注意です。
前面道路の幅や種別、角地であれば隅切りの有無、電柱や支線の位置もあわせて写真で残すとよいでしょう。
その道路が建築基準法上の「道路」に該当するか、役所で確認できる資料があると買主の安心につながります。
セットバックが必要な地域では、想定される後退線の位置や、減少する面積を簡単に図示しておくと親切です。
私道の場合は、舗装や補修の管理者が誰か、通行や掘削の承諾が得られているかも確認が必要です。
もしライフラインの引込替えや移設が必要になりそうな場合は、調査士などと工事の期間や費用感も話し合っておきましょう。
このような現況を早めに開示しておけば、測量図がなくても納得感のある説明が可能になります。
リスクと価格・期間への影響を見極める
値引き・解除につながる要因
境界があいまいな土地や、面積に不確定な部分がある場合、価格交渉の対象になることが多くあります。
私道の承諾が整っていない、越境物の処理方針が決まっていないといった点も、買主にとっては大きな懸念材料です。
これらが原因で、住宅ローンの審査が通らなかったり、建築計画が進まなかったりするリスクもあります。
説明資料が不足していると、買主は最悪のケースを想定し、慎重な姿勢に傾きがちです。
一方で、懸念点を早い段階で開示し、どのように対応していくかを提示できれば、値引き幅を抑えられる可能性もあります。
契約不適合責任の範囲を明確にし、既知の問題は特約にきちんと落とし込むことも有効です。
また、測量や協議のスケジュールを前もって調整しておけば、解除リスクを最小限にできます。
売主の誠実な対応と情報提供は、信頼の土台となり、価格の安定にもつながります。
引渡し遅延とトラブルの芽
測量や境界協議が必要な場合、その進行状況によっては引渡しのタイミングに影響が出ることがあります。
特に、官民境界の確認や役所とのやり取りには日数がかかり、隣地の立会い調整にも手間取ることがあります。
越境の是正や撤去が伴うと、工事の手配や天候などの影響も加わり、思わぬ遅延につながることも。
こうした事態に備えて、契約前からスケジュールや進行中の事項を買主と共有しておくと、不信感を防げます。
期日や延長条件もあらかじめ再確認しておくと安心です。
書類の準備や押印など、日数がかかりそうな項目は、早めに動き出すことがカギになります。
段取り表を作成し、関係者の連絡先も共有すれば、手続きが停滞しにくくなります。
小さな積み重ねが、大きな遅延を未然に防ぐ力になります。
売れ行きへの影響
測量図がない物件は、どうしても検討対象として敬遠されやすく、成約までに時間がかかる傾向があります。
ただし、資料の整備状況をきちんと明示し、対応の見通しまで提示できれば、買主の安心感につながります。
複数の不動産会社に査定を依頼し、地域の取引傾向に沿った売り方を検討すると、より現実的な方針が立てられます。
広告には現況や不明点を正確に記載し、内見時に補足資料を提示できるよう準備しておくと信頼を得やすくなります。
価格は、資料や合意の整備状況に合わせて柔軟に見直し、適切なタイミングで調整することが重要です。
進捗に応じて説明の幅が広がるほど、買主の検討スピードも上がります。
買取との比較や早期成約を狙うなら、条件の柔軟性も視野に入れておくと良いでしょう。
見せ方や情報の透明性次第で、現況の印象は大きく変わります。
測量を実施する場合の現実解
現況測量と境界確定測量の違い
現況測量は、敷地にある境界標や塀、道路の形状をもとに、現状を図面化する作業です。
一方、境界確定測量では、隣地所有者や役所との立会いを通じて、境界位置を法的に確定し、書面として残します。
現況測量はスピーディに全体像を把握したいときに適しており、確定測量は登記や建築手続きの基礎資料として求められることが多いです。
官民境界の協議や筆界の確認が必要な場合は、確定測量でなければ先に進めないケースもあります。
こうした違いを理解し、目的に応じて必要な精度と範囲を選ぶことが、費用や時間のムダを省くポイントです。
用途や融資条件を不動産会社・調査士と共有し、過不足のない測量範囲を設定するのが現実的です。
必要に応じて、まず現況測量を行い、状況を見ながら確定測量に移行する段階的な対応も有効です。
目的と手段を混同せず、合理的に使い分けることが、賢い測量判断につながります。
費用と期間の目安/短縮のヒント
測量にかかる費用や期間は、土地の面積や形状、筆数、隣接地の数、官民境界の有無などによって大きく異なります。
私道の整理や越境の解消、役所との協議が絡む場合は、スケジュールに余裕をもつ必要があります。
早期対応の鍵は、登記・公図・図面・承諾書などの資料を初回打合せ時にまとめて渡すことです。
また、隣地への挨拶や、立会いの目的説明を早めに行っておくと調整がスムーズになります。
役所の繁忙期や天候リスクを避けた時期を選ぶだけでも、全体の進行が早まります。
成果物の形式や必要部数を事前に確認しておけば、再提出や手戻りのリスクも防げます。
オンラインでの進捗共有や、工程表での可視化も効果的です。
着手範囲を最小限にとどめ、必要に応じて広げる柔軟な進め方が、コストパフォーマンスを高めます。
土地家屋調査士の選び方と依頼の勘所
測量を依頼する際は、地域の実情や官民協議に強い土地家屋調査士を選ぶことが重要です。
見積書は、作業範囲・立会い回数・成果物の内容・申請有無・経費まで明細化してもらいましょう。
過去の類似案件の進め方やスケジュール感を確認すると、実務力の把握につながります。
隣地との合意形成や越境の対処方針についても、柔軟かつ誠実な対応ができるかが鍵です。
納品形式や座標系、図面の再利用可能性など、将来の活用まで見据えて条件を整えましょう。
登記・公図・過去の図面・関係書類・連絡先を最初に渡すと、精度が高まり作業も効率的です。
不動産会社と三者で打ち合わせを行うと、売却スケジュールと調整しやすくなります。
要件のすり合わせと信頼関係ができていれば、測量から売却までの流れが格段にスムーズになります。
境界トラブルを避ける動き方
隣地との合意形成と書面化
売却を進める第一歩は、ご近所への丁寧な挨拶と目的の共有です。いきなり本題に入るのではなく、「なぜ今、売却なのか」を簡潔に伝えることで、相手の理解が得やすくなります。
次に、現地立会いの候補日を複数提案し、所要時間や目的を事前に伝えておくと、相手の心理的ハードルが下がります。
境界標の位置確認や越境物の有無、修正が必要な箇所については、できる限りその場で認識を合わせておきましょう。
話し合いの内容は、後のトラブルを防ぐ意味でも、境界確認書や覚書として書面にまとめ、署名と押印を済ませておくのが基本です。
その際、写真付きの現況図を添付しておくと、あとから説明が必要になったときにも安心です。
万が一意見が分かれた場合は、「今は保留」としたうえで、再検討の余地を残す姿勢が関係維持に有効です。
必要に応じて、第三者である土地家屋調査士の立会いをお願いすると、公平性と説得力が増します。
こうした記録は、不動産取引における重要事項説明でも役立ち、買主にとっての安心材料にもなります。
最終的には、小さな合意の積み重ねが、大きな信頼を築く礎になります。
法務局の筆界特定の活用
隣地との話し合いで意見が合わず、境界の認識が大きくズレている場合には、「筆界特定制度」の利用が選択肢になります。
これは、登記上の“筆界”の位置を法務局が公的に判断してくれる仕組みで、あくまで「境界線の位置」に焦点を当てた制度です。
申請には、土地家屋調査士や弁護士との連携が有効で、収集すべき資料や申請範囲の選定もスムーズに進みます。
筆界が特定されれば、将来的な登記修正や買主説明の裏付け資料として活用でき、安心材料にもなります。
ただし、手続きには一定の期間を要するため、売却スケジュールへの影響も考慮しておきましょう。
他の方法と比較しながら、「今は申請すべきかどうか」を判断する冷静さも大切です。
公図や過去の図面を照らし合わせる作業も併用すれば、判断に一貫性が生まれます。
買主への説明時には、「この制度で何が明らかになり、どこまで解決できるのか」を明確に伝えることが肝心です。
申請範囲の設定や争点の絞り込みによって、より実務的な成果を得やすくなります。
タイミングを見極めて使えば、長引く境界問題を整理する強力な一手になります。
後日測量図が出てきた場合の対応
売却活動を進める中で、思わぬタイミングで過去の地積測量図や古い図面が見つかることがあります。
そうした資料が出てきた際は、登記、公図、そして現況と照らし合わせて、整合性のチェックを即座に行いましょう。
記載されている数値や基準点に違いがある場合は、なぜそうなっているのか、どの範囲に影響するのかを冷静に整理します。
そのうえで、説明資料をアップデートし、広告や重要事項説明書にも反映させます。情報を速やかに買主へ伝えることが信頼をつなぎます。
内容次第では、契約書の条文や特約を修正し、双方にとって納得できる形に整える必要が出てきます。
もし大きな差異がある場合には、土地家屋調査士に追加の測量や検証を依頼するのが安全です。
資料は原本・コピーを明確に分けて保管し、作成年や出所が分かるように管理します。
時間軸に沿った整理を行うことで、「なぜ今の形になったのか」が説明しやすくなります。
情報は関係者間で必ず共有し、誤解やすれ違いを防ぎましょう。
まとめ
測量図がなくても、土地や建物の売却は状況次第で十分に可能です。
境界標の有無や登記との整合性、買主の目的によって求められる条件は異なりますが、基本的な確認と丁寧な説明ができれば、不安を和らげることができます。
境界の明示、公簿や実測での売買方法、リスクの整理など、段階的に準備を進めることが大切です。
測量図が後から見つかった場合にも、冷静に内容を整理し、買主と誠実に情報を共有することで、信頼関係を築けます。
今回の記事が、迷いのある売主の一歩を後押しするきっかけになれば幸いです。
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